【フリー】初恋の人に結婚式で再会した話
「初恋」
初恋と聞くと、私は冬の郡山駅前を思い出す。
初恋が実る人もいれば、実らない人がいる。
私にとっての初恋は、後者だった。
18歳の頃、ずっと隣の席の子が好きで好きでたまらなかった。どれくらい好きかと問われたら、それまでで好きになったものを足して、倍にしても足りないくらい好きだった。
アンパンマンの元気は毎週100倍になっていくけど、自分のその子に対する好きも、それに負けてなかった。
私が18歳まで育った福島県の郡山市というところは、当時(2011年)はそこそこの揺れがおそってきた後で、そこそこにめちゃくちゃだった。
急遽校庭に建てられたプレハブ小屋で、授業を受けていた。
私は、食欲、性欲、睡眠欲の次に「ふざけたい欲」が強いので、高校時代もふざけにふざけつくしていて、自分のボケで彼女が笑っていると最高に嬉しかった。
彼女に、彼女自身が進学予定の大学をすすめられ、彼女と同じ大学を目指しはじめた。
かっこいいと思われたくて、興味もないフランス語学科を選んだ。
なんとか彼女と同じ大学に合格し、卒業式の日に、駅の改札の前で待ち伏せた。
彼女が来るのを待つ時間は、人生で1番緊張していた。
彼女が来て、
シンプルに告白して、
フラれた。
3月の東北、異常なほどの冷たい風に吹かれながら、1人で家まで帰った。
その日は不思議と涙も出なかった。
そんなこんなで、フラれたクラスメイトと同じ大学に通うという、地獄の大学生活に突入する。
キモいと思われるだろうから、できるだけ同じ空間にいないようにしようと決めた。
大学から離れた、東京とは思えないような場所にある寮に住んだ。
ただ、大学生活は最高に楽しんで卒業した。
そして大学のクラスメイトの結婚式の2次会で、事件は起きる。
会場に入ると、初恋の人がいた。
大学時代は学内で見かけてもさけてきたけど、結婚式の日は話しかけなかったら後悔しそうで、頑張って話しかけようと決めた。
しかし話しかけようとすると、心の中の風景は「郡山駅の改札前」になっていく。
郡山駅状態から抜け出すために必要以上にワインを飲んでから、話しかけにいった。
いつもなら、テイスティング以外であそこまでワインは飲まない。ワインには感謝してもしきれない。
結果、彼女と写真をとって、話をした。
それだけだけど、満足だった。
それだけでいいと思う。
帰省のタイミングで、郡山駅の改札前を通るのが、楽しみになった。